頸管粘液の変化・状態と、健康を整える方法

頸管粘液はなぜ大切なのでしょうか?
keggの測定は、頸管粘液に含まれる電解質を利用しています。keggを初めて使う方にとって、この記事は、頸管粘液が生殖の過程で重要な役割を果たす理由と、その変化を正しく記録することの大切さを理解するための参考になるでしょう。
まずは、頸管粘液の働きを簡単に振り返りましょう。なぜ重要で、妊娠の成立にどのように関わるのでしょうか? 頸管粘液には、次のような大切な役割があります。
- 酸性の腟内環境から精子を守り、腟内での精子の生存期間を延ばします。
- 異常のある精子をふるい分けます。
- 精子に生化学的な栄養を与えます。つまり、精子の「食べ物」として働きます!
- 卵子が近くに来るまで精子を保持します。
- 子宮頸管の開口を保ちます。
頸管粘液の「質」を決めるものは?
インターネットで妊活について調べたことがある方なら、目安とされる「卵白のような」頸管粘液をご存じかもしれません。ここでは親しみを込めて、英語のEgg White Cervical Fluidを略して「EWCF」と呼びましょう。この粘液はほぼ透明で、非常によく伸び、指の間で数インチ(数cmから十数cmほど)伸びることもあります。このタイプの粘液が見られると、妊娠しやすい期間が始まり、妊娠を目指すのに適した時期に入ったことがわかります。
keggでも周期を記録している方は、妊娠しやすい期間に測定値が下がることに気づくでしょう。この下降傾向は、エストロゲンの急増など、排卵に向けたホルモンの変動に伴う電解質の変化を表しています。keggは妊娠しやすいと予測される日を緑色で強調表示しますが、チャート上の数値が下がる様子から、その変化をリアルタイムで見ることもできます。
では、EWCFが見られることから、ホルモンや妊娠しやすさについてどのような情報を得られるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
頸管粘液の質と働きは、月経周期の各段階と密接に関係しています。周期の前半では、子宮頸部はエストロゲンの影響を受けます。エストロゲンによって頸管粘液はより水分の多い状態になり、ムチンと呼ばれる大きな分子が規則正しく並んで、精子の通り道をつくります。ボウリングのレーンにバンパーを設置して、ボールをピンへと導くようなイメージです。
さらに、エストロゲンは粘液の分泌量も増やします。通常、子宮頸部は1日に20〜60mgの粘液を分泌しますが、排卵期には700mgに達することもあるのです。驚きですね! 頸管粘液の質はホルモンのシグナルに大きく左右されるため、ホルモンの乱れを伴う状態が頸管粘液にも影響する可能性があるのは、自然なことといえます。
排卵後は、通常、頸管粘液が減少します。EWCFと比べて、粘りが強くなったり、よりクリーム状になったりすることがあります。これはプロゲステロンの産生へとホルモンの状態が変化することに伴うもので、粘りの強い粘液は、排卵後の感染を防ぐバリアとして働きます。妊娠が成立した場合、妊娠期間を通じて頸管粘液にはさまざまな変化が見られ、その様子には大きな個人差があります。
頸管粘液の変化に関連する疾患・状態
頸管粘液の質、ひいては妊娠しやすさに影響する可能性のある状態はいくつもあります。粘液の量と感触の両方が変化するため、人によっては記録や観察が難しくなることがあります。そんなときこそ、妊娠しやすい期間の始まりを把握するためにkeggを役立てられます。keggは頸管粘液の質や量ではなく、電解質の組成の変化を検出するため、粘液のパターンだけでは判断しにくい方にも有用な情報を提供できます。ここでは、頸管粘液の質の変化に関係する代表的なケースを紹介します。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経不順や不妊のよくある原因の一つです。多くの場合、卵子の成熟や排卵が起こらないことが主な原因ですが、頸管粘液の変化も妊娠のしにくさに関わっている可能性があります。原文執筆時点までの約10年間の研究で、PCOSのある女性の頸管粘液は、PCOSのない女性と異なる可能性が示されてきました。この違いは、規則的に排卵していない女性で特に大きく見られます。顕微鏡で調べると、PCOSのある女性の頸管粘液は密度が高い傾向にあり、精子が泳いで通り抜けにくくなっています。また、粘液内の繊維の配列が不規則で、精子を卵子へと導く通り道としての働きが弱くなっていました。[ii]
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮腔の外に存在することを特徴とする、炎症を伴う婦人科疾患です。日常生活に支障をきたすほどの痛みや、不妊の原因となることがあります。子宮内膜症の診断のゴールドスタンダードには、体への侵襲を伴う腹腔鏡手術が用いられます。そのため、研究者たちは、より侵襲の少ない診断方法を探してきました。
新たな研究では、頸管粘液に含まれるタンパク質の組成から、子宮内膜症の存在を示唆できる可能性が示されています。2017年に発表された小規模研究では、子宮内膜症のある女性10人と、子宮内膜症がなく過去1年以内に出産した女性10人から頸管粘液を採取しました。その結果、子宮内膜症のある女性では、炎症に関係するタンパク質が多く、免疫機能・抗酸化による保護・抗菌作用に関係するタンパク質が少ないことが示されました。[iii] 頸管粘液は、体内で起きているほかの生理的な過程を知る手がかりにもなるようです。
細菌性腟症
一般的な細菌感染である細菌性腟症は、妊娠に適した健康な頸管粘液の産生を妨げる可能性があります。細菌性腟症と診断された妊婦を対象としたある研究では、頸管粘液中の炎症性物質と白血球の量が多いことがわかりました。また、生殖器内の精子に害を及ぼす可能性があるエンドトキシン(内毒素)の濃度も高くなっていました。[iv]
さらに、細菌性腟症のある妊婦では、頸管粘液中のプロスタグランジン濃度が高い可能性があります。これらの物質は子宮の収縮や子宮頸部の熟化を促すため、早産のリスクを高める可能性があります。[v] 頸管粘液をよく観察する大きなメリットの一つは、「いつもと何か違う」と気づけることです。ご自身の体について、あなた自身がいちばんの専門家になっていくのです。
健康な頸管粘液を取り戻すためにできること
頸管粘液の状態が気になる場合、原文では次のような方法を提案しています。
症状を日記に記録しましょう。keggを使うのもおすすめです! 数周期にわたって粘液の変化を記録してみてください。自分特有のパターンを知るには慣れが必要ですが、記録から得られる情報は、何か問題が生じたときにその根本的な原因を探るうえで、とても役立ちます。
ホルモンの状態を確認しましょう。 医療者と相談しながら周期を通じてホルモンを測定し、正常なリズムに沿って変化しているか確認してください。
ご自身の体を大切にしましょう。 十分な水分補給と、質のよい脂質をとることを意識してください。「何にでも同じ答えだな」と感じるかもしれませんが、頸管粘液の95〜98%は水分です。水分をとりましょう! 原文では、体重をポンドで表した数値の半分に相当する量を、液量オンスでとることを一般的な目安として挙げています。たとえば体重150ポンド(約68kg)の人なら、1日75米液量オンス(約2.2L)の水という計算です。
医療者と相談して、ご自身に合ったサプリメントを選びましょう。 原文の筆者が特に好んでいるものの一つが、N-アセチルシステインです。このサプリメントには、分泌物の粘りを弱める「粘液溶解作用」があり、EWCFがつくられるのを支える優れた方法として紹介されています。
鍼治療を試してみましょう。 原文では、鍼治療はさまざまなメリットに加えて骨盤内の血流を増やし、健康な粘液の分泌を促す方法として紹介されています。
参考文献
[i] Martyn F, McAuliffe FM, Wingfield M. The role of the cervix in fertility: is it time for a reappraisal? Hum Reprod. 2014 Oct 10;29(10):2092-8. doi: 10.1093/humrep/deu195. Epub 2014 Jul 27.
[ii] Vigil P, Cortés ME, Zúñiga A, Riquelme J, Ceric F. Scanning electron and light microscopy study of the cervical mucus in women with polycystic ovary syndrome. J Electron Microsc (Tokyo). 2009 Jan;58(1):21-7. doi: 10.1093/jmicro/dfn032. Epub 2009 Jan 12.
[iii] Grande G, Vincenzoni F, Milardi D, et al. Cervical mucus proteome in endometriosis. Clin Proteomics. 2017;14:7. Published 2017 Feb 2. doi:10.1186/s12014-017-9142-4
[iv] Platz-Christensen JJ, Mattsby-Baltzer I, Thomsen P, Wiqvist N. Endotoxin and interleukin-1 alpha in the cervical mucus and vaginal fluid of pregnant women with bacterial vaginosis. Am J Obstet Gynecol. 1993 Nov;169(5):1161-6. doi: 10.1016/0002-9378(93)90274-m.
[v] Platz-Christensen JJ, Brandberg A, Wiqvist N. Increased prostaglandin concentrations in the cervical mucus of pregnant women with bacterial vaginosis. Prostaglandins. 1992 Feb;43(2):133-4. doi: 10.1016/0090-6980(92)90082-5.
出典:Cervical mucus stages, conditions and how to restore cervical fluid health — kegg Team
keggの許可を得て、日本語に翻訳・転載しています。画像は原文のものを使用しています。